ツナゲル・ヒロゲル・ササエル
- 愛知県名古屋市名東区
- 構造・規模:RC造地下1階+地上2階建
完工年:2017年/敷地面積:363.86㎡/延床面積:364.16㎡(110.16坪)
構造・規模:RC造・地下1階+地上2階建
ツナゲル
分かれている2階同士を繋ぐ「ブリッジ」を設けました。
ブリッジが空間の中で異物とならないよう、見え掛かり面に、吹抜の一部の壁にも使用している羽目板を張ることで素材合わせを行い、馴染ませるよう配慮しました。
ブリッジの形状も、なるべく存在感を減らすよう角を斜めにし、舟形形状とすることで、少しでも視線の通りをよくするよう意識しています。
2階同士を繋ぐ「ブリッジ」
せっかくの吹抜の開放感をなるべく残すよう、ブリッジの手摺にはガラスを採用しました。
通路幅も通行に必要な最小限に留めることで、開放感への影響を少なくしています。
吹抜天井には、元々円筒状のトップライトが3ヶ所設けられており、吹抜全体に明るい自然光を行き渡らせていました。
その明るさは保ちつつ、今回の計画にて、円筒の側面をパステルイエローに塗装しました。
結果、目にアクセントとしてイエローが見えることと、イエロー面を反射した光が広がることで、吹抜空間を別の姿に蘇らせることに成功したのではないかと思っています。
造り替えた玄関ドア
元々の玄関ドアも木製のオリジナルドアで、経年変化によりいい味を醸し出していたのですが、傷みや隙間や防犯の問題から新しく造り替えることとなりました。
壁のレンガ調のタイルは元からの仕上であり、このタイルが建物の構造的な品質の維持に寄与し、また見た目の風格を保っている大きな要因だと思われます。
この玄関吹抜は、レンガ調タイルありきで、新しい仕上を考えていきました。
例え古くても、よいものは積極的に残して、うまく利用していくことが、リノベーションの有効な手法だと考えています。
ヒロゲル
既設リビングとダイニングキッチンは別室となっていました。
庭に面する大開口の採光・通風・眺めをダイニングキッチンからも享受できるよう、境界の間仕切りを取り払い、LDKを一空間とすることを検討しました。
調理中や後片付け中も家族の気配を感じ取りやすいよう、キッチンとそのほかの空間との関係性には常々配慮しています。
幸いにも、既設間仕切り壁は構造壁ではなかったので、空間を繋げることが実現できました。
空間の一体化
壁を取り払いLDKの一体化は実現しましたが、構造躯体の関係から、どうしても段差を解消できない状況でした。
段差の位置は、使い勝手からある程度の調整を行いましたが、床の分断が生じることは、今回の計画においては本意ではありませんでした。
そこで、空間の一体化をより色濃く感じられるよう、壁と天井の仕上の『連続性』を特に意識してデザインを行うことにしました。
壁は石積仕上をアール形状に連続させ、天井は大きさの異なる木桟をランダムに張る仕上を連続させました。
存在感の強いものを選ぶことで、単調な白い面に比べて、連続していることをより意識させるよう意図しました。
また素材感のあるもので構成することで、LDK空間に深みを与えることも併せて試みています。
キッチンからの景色
キッチンからは、ダイニング、リビングを通して、庭まで視線が通るよう計画しました。
庭の明るさと緑、石積や木桟などにより、調理や後片付けの合間にふと顔を上げた時にこれらが目に入ることで、忙しい中の大変な家事仕事が少しでも心地よくなればと願っています。
オリジナルキッチン
キッチンは「インターテック社」のオリジナルキッチンを採用しています。
柱型などがあり、特殊な形状にする必要があったので、オリジナルキッチン向きと言えます。
何度もショールームにて打合せを重ねてここに至りましたので、クライアントの調理スタイルに合ったキッチンになったのではないでしょうか。
アンティーク調の家事室
家事室とする部屋には、元からのステンドグラスがあり、とても非日常的な雰囲気の空間でした。
このステンドグラスを活かすべく、ややアンティーク調のデザインとすることを提案しました。
かなり古いステンドグラスですが、とてもよい状態で残されていたので、この先もこの住宅のアクセントとして、神秘的な光を放っていただきたいと思います。
FRPグレーチング床
既設階段室には、地階に自然光を落とす光井戸がありました。
その辺りは必要以上に階段吹抜スペースがとられていたので、今回のリノベーションにあたり、元の光井戸の機能は保ちつつ、使用できる床面を少しでも増やすような方法を考えました。
結果、FRPグレーチング床がその候補となり実現に至りました。FRPグレーチング床は、メンテナンス時には取外しができるよう収まりを考えてあります。
ササエル
耐震補強を行ったガレージの壁は、ほかの壁と同様にレンガ調タイルが施工してあったので、一旦撤去する必要がありました。
補強壁をつくった後、似たタイルを探して張り直しましたが、知らない人は昔のままで、新しく張り直したとは分からない感じに仕上がりました。
あらためてタイルの耐久性の高さを感じた次第です。
繋げて、拡げて、支える
中古住宅を取得して、リノベーションを行いたいとの依頼をいただきました。
築年数がかなり経っている割には、あまり古臭さや老朽化を感じさせないつくりの建物で、当時の設計者の熱意が随所に残されていました。
一風変わった空間構成となっており、裏庭まで抜ける玄関吹抜を介して、2階建てが2棟に分かれている間取りでした。
それぞれの2階同士は直接行き来が出来ず、一旦1階に降りて、また階段を昇るという動線であり、元のクライアントはそこに意義を見出していたのだと推察しますが、新しくこの建物を取得するクライアントにとっては、非合理的な動線に感じられるようでした。
この問題を解決するため、玄関吹抜に新しく「ブリッジ」を設け、2階を『ツナゲル』こととしました。
リビングとダイニングキッチンが分かれていたので、これを一体化し『ヒロゲル』工事も行いました。
また耐震診断の結果、構造面において一部不安を感じさせる箇所があったため『ササエル』耐震補強も実施しました。