江川竜之建築スタジオでは、日常業務の合間をぬって、国際コンペにも応募しています。
最近では、ユネスコが主催した 『The Bamiyan Cultural Centre』 に応募しました。
http://bamiyanculturalcentre.org/
戦争とテロとの戦いで疲弊したアフガニスタンにおいて、バーミヤンという世界遺産にも指定されている文化的価値の高い遺跡のある地域にカルチャーセンターを建設し、多民族社会であるアフガニスタンに、民族間、または国際的な交流を促すことを目的とした施設です。
2001年に起きたタリバンによる大仏破壊の映像で、バーミヤンをご存じの方も多いことでしょう。バーミヤンはタリバンが支配していた地域でしたが、国際社会の介入の結果、現在はタリバンの影響はほぼ薄れ、観光地としての状態を少しずつ取り戻しているようです。
とはいえ、元々多民族が住むこの地域に、西欧諸国が無理矢理国境線を引くことで、同じ民族が2つの国に分けられてしまったり、仲のよくない民族が一つの国としてまとめられたりしてしまったため、大きな戦争や内戦が終息しても、根強い民族間対立の気運は一触即発の状態が続いています。
コンセプト
新しく建設されるカルチャーセンターを通して、異なるlanguage、異なるreligion、異なるcultureが織りなす複雑な社会構造をもつアフガニスタンの多様性を許容し、理解し、交歓するためには、共通の”identity”を自覚することが重要であると考えました。
他民族の人々が共有することのできる”identity”、それはアフガニスタンの自然が生み出す圧倒的な美しさ、そして過去の先人達が遺した歴史的遺産であると位置付け、美しい山並みとバーミヤンの世界遺産をメインコンセプトに据えることとしました。
この衛星写真のように、アフガニスタンには言葉にできないくらい美しい山並みが存在します。(digital Image ©2015 Terra Metrics,Map Data 2015©Google)
ヒンドゥークシュと呼ばれる山々を中心とする山岳地帯は、その山肌に強烈な太陽光を受け、美しい光と影のコントラストを見せています。
この美しい地勢を積極的に建物のデザインに取り込むよう計画を進めました。
また施設を線状に長くレイアウトすることで、山並みを背景に持つブッダクリフ(バーミヤン世界遺産ある崖地)への眺望を、施設のさまざまな場所で享受できるようにプランニングしました。
本コンペにおいては入賞することは叶いませんでしたが、日本のような当たり前の平和を享受できない異国において ”建築ができること” を深く考えるよい機会となりました。
またバーミヤンに関する様々な文献を読むことで、アメリカの同時多発テロに繋がるこの地域の混沌と混乱の一端を垣間見ることができました。
本提案を通して感じたこと、考えたことを、今後の設計活動に生かしていきたいと思います。
そしてこれからも、世界という舞台に挑戦していきたいと思います。